第12回 レイルウェイ・デザイナーズ・イブニング 2026
蘇る地方鉄道 型破りのデザイン戦略と地域ブランディング2026年5月28日(木) インテックス大阪 5号館内講演会場
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【第1部】
■ 地方鉄道デザイン2件受賞、嬉しいニュースの報告で開会

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【第1部】
鉄道デザインを考える人たちが集い、考え、語らう場を提供する活動グループとして、レイルウェイ・デザイナーズ・イブニング (RDE) は2013年に発足した。毎年開催されるRDEフォーラムは、奇数年が千葉市の幕張メッセで行われる鉄道技術展との併催となるのに対し、偶数年は首都圏以外で開かれることが多い。
■ 地方鉄道デザイン2件受賞、嬉しいニュースの報告で開会
2026年は第2回鉄道技術展・大阪の会場、インテックス大阪で行われた。第1回鉄道技術展・大阪が開催された2022年以来、4年ぶりの大阪だった。
今回のテーマは「蘇る地方鉄道―型破りのデザイン戦略と地域ブランディング」。運営面では厳しい立場にあるが、地域の風土や文化に寄り添う移動体という魅力を忘れてはならないし、近年は画期的なデザインやメカニズムの車両導入もあるので、持続可能な地域交通としての可能性に期待を込めての設定になった。
司会はRDEフォーラムではお馴染みの鉄道好きフリーアナウンサー、久野知美氏が担当。まず近畿車輛で長年国内外の鉄道車両デザインを担当してきたRDE実行委員会委員長の南井健治氏が、主催者挨拶を行なった。
「1週間前に鉄道友の会から発表があり、今日ご発表いただくGKデザイン総研広島の鈴木さんがデザインされた嵐電(京福電気鉄道嵐山本線・北野線)『KYOTRAM』がブルーリボン賞、近畿車輌の杉本さんが手掛けられた伊予鉄道7000系がローレル賞を受賞しました。地方鉄道のデザインが2件も選ばれたのはとても嬉しいニュースです」
鉄道技術展の開催とブルーリボン賞・ローレル賞の発表は、事前の申し合わせなどはないので、偶然のタイミングではあるが、登壇者の方々に華を添える形になった。
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■ デザインが地方の危機を救う




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■ デザインが地方の危機を救う
基調講演は、「地方は大胆になれる」というタイトルで、モビリティジャーナリストでRDE実行委員の森口将之氏が担当した。まず着目したのは、「地方」「田舎」という言葉だった。
「地方という言葉は昔からあり、江戸時代には『ぢかた』いう読み方で、都市を示す町方(まちかた)に対する概念でした。現在の『ちほう』は、国土交通省では三大都市圏の東京圏・大阪圏・名古屋圏を除くエリアと分類されています」
対する田舎は、文化史的には稲家(いなか)・田居中(たいなか)が語源で、米作を行う地域のことを指していたという。どちらも農村のことを指していたようだ。
そんな地方は過疎化や高齢化など、厳しい局面はあるものの、一方で固有の風土や文化を原動力として、大胆な魅力をアピールする事例もあると指摘。
例として挙げたのは青森県で、南津軽郡田舎館村は全国に先駆けて田んぼアートを展開し、近くを走る弘南鉄道弘南線に「田んぼアート駅」まで設けられたことや、北津軽郡鶴田町の人造湖・津軽富士見湖には、日本最長の木造三連太鼓橋「鶴の舞橋」が存在することなどを紹介した。
鉄道についても、「攻める地方鉄道」と呼びたくなる取り組みをピックアップした。
たとえば秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線の阿仁合駅では、北緯40度に位置することから数字の4を背中合わせにした駅舎で「しあわせ」を表現するとともに、内部に売店や食堂も設置することで、地域拠点としての役目も果たしている。
日本初の本格的LRTとして開業した富山地方鉄道富山港線は、車両だけでなく停留場や架線柱など、インフラも含めたトータルデザインを取り上げただけでなく、富山駅の南側を走る富山軌道線との直通化を実現し、フィーダーバスやシェアサイクルへの乗り継ぎをしやすい構造にするなど、利便性についても評価した。
日本では数少ないナローゲージの四日市あすなろう鉄道内部線・八王子線は、両線が分岐する日永駅に標準軌・狭軌との違いがわかる軌間定規を展示。車両では座席脇の把手をハート型とする、床の一部を強化ガラスとして床下を観察できるなどの取り組みを報告した。
「地方は都市機能が小さいからこそ、大きく変わることができると考えています。その手段として効果的なのがデザインです。デザインが危機を救う。他の分野でそんなストーリーをいくつも見てきました」
それは鉄道でも可能だと信じている。だからこそもっと大胆になってほしいとエールを送った。
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■ 路面電車はまちの一部「風情が保たれることが大事」




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■ 路面電車はまちの一部「風情が保たれることが大事」
テーマ講演は四者が登壇した。最初はアルナ車両代表取締役社長の田島辰哉氏「路面電車への想いと異形のDesign戦略」だった。
アルナ車両は阪急電鉄の子会社として設立されたアルナ工機から事業譲渡を受けた会社で、鉄道車両のリニューアルや保守整備を担当しつつ、路面電車の新造を手掛けてきている。
「1990年代、国内の路面電車の多くは高床の単行車両でしたが、海外では連節の低床車両が主流でした。そこで当社では国産低床車両を独自に開発し、多くの事業者様に納めさせていただいております。商標名はリトルダンサーで、『小さな段差』に由来したものです」
田島氏は続いて、自ら制作したアニメーションを披露。最初に製造した、両端に台車がありその間を低床としたSタイプから、3分割で中央が低床のA3タイプ、台車からモーターを分離することで台車部分を低床化したUタイプなど、需要に合わせて構造を次々に変化させていく様子を、わかりやすく見せた。
現在日本で路面電車が走っているのは20カ所ほどだが、全国共通の車両規格はないうえに、低床ではない電車も作ったので、25年間に約30車種を手掛けてきたとのこと。製造数は年間5両程度で、ほとんどが1ロット1~2両しかないという。
事業者からはお任せのような形で話をいただくそうだが、自由にできるわけではない。線路の条件や施設の状態、どのような方が働いているかなどを見極め、事業者からのオファー以前に田島氏自身が独自に描き溜めていた基本設計のなかから最適案を提示し、受注が決まればデザインに移っていく。
ここまできめ細かく対応する理由について、田島氏は路面電車がまちの一部であることを挙げた。
「路面電車の走るまちのブランドイメージは、車両が作っているものではありません。線路や施設、利用する人や運行する人などとともに街全体が作り出しているものであり、その風情が変わらずに保たれることが一番大事です。そのためには車両を実情に合わせなければいけないと考え、多種多様な低床車両をDesignしてきました」
最後に田島氏が触れたのは、アルナ工機が倒産したとき、各ステークホルダーの多大な努力やご恩のおかげでリトルダンサーが生き残ったことだった。各地の事業者やサプライヤとのご縁を大切にし、たとえ1ロット1両であっても対応するのがミッションであると述べた。
地方に行くとよく見かける、ラッピング広告をまとった電車は、オリジナルのデザインをした人は残念な気持ちかもしれないとしつつ、全身ラッピングになれば車両の減価償却費が賄えるので、事業継続には絶対必要であると説明した。
さらにクライアントが広告を出す理由は、新型車がデビューのときにメディアに取り上げられて話題になることもあると言及し、やはりデザインには気を配らなければいけないと述べた。
大都市の満員電車でみながスマートフォンを見ているような状態に比べると、地方の路面電車にはまだ昔の温かい空間は残っており、そのような姿を目にすると、これからも路面電車のために力を尽くしていきたいと決意を口にしていた。
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■ 循環型社会や持続可能性に対応した車両を表現




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■ 循環型社会や持続可能性に対応した車両を表現
二番目に登壇した川崎車両技術本部技術戦略部デザイン科基幹職の青木謙知氏は「GreenDEC(グリーンデック)のはなし」のタイトルで、新たに開発した地方鉄道向け標準型気動車をテーマとした。
話は開発の背景から始まった。同社のなかで、地球と地域が抱える社会課題に目を向け、これを解決していこうという大きな動きがあり、2021年11月にスタートしたという。
地球の社会課題として挙げたのは地球温暖化で、毎年のように自然災害が発生し、鉄道も大きな被害を受けていることを指摘した。
「特に地方鉄道では、被害が大きく長期運休が発生すれば、利用者が離れ、さらに復旧が困難になってしまいます。たとえば、くま川鉄道は復旧までに約6年かかっています。地域の足を守りたいという強い思いがあるからこそ、困っておられます」
もうひとつは地方の少子高齢化だ。利用者が減少し、鉄道の維持が困難になるだけでなく、事業者の従業員も高齢化して、技術の伝承などができなくなりつつあるという。
さらに国内の非電化区間のほとんどで使われている液体式気動車は、液体変速機など特有の部品の調達が難しくなっており、他の車両から部品を取って、やっと維持している事例もかなりあるそうだ。
そこで川崎車両では、使用機器を電車と共通化した電気式気動車の製造を決定した。これがGreenDECで、部品の調達を容易とすることで、保守の負担を低減するとともに、水素動力への転換の対応も想定した設計とした。
GreenDECの走行装置はほぼ電車なので、液体式気動車とは整備内容がかなり違う。そのためのノウハウがないと困るので、アフターサポートのメニューも提供し、新規車両であっても不安なく維持ができるようにした。
「車体は長寿命化を狙うとともに、塗装コスト削減も考え、ステンレス製としました。これまでの多くの車両は、お客様から注文をいただいてから作るという流れでしたが、今回は標準車を作り、お客様に合ったオプションメニューを組み合わせてご提供していくところも特徴です」
車体は全長18mの2扉を標準とし、20mの3扉車をオプション設定した。カラーリングは塩化ビニールの接着フィルムを基本として、さまざまな要望に応える体制とした。
前頭部はコーナーに曲面ガラスを使ったパノラミックウィンドウを使って、ワンマン運転で重要な視界を確保。この前頭部は鉄製で、シンプルな形状とすることで、野生動物と衝突した際の補修が容易になっている。インテリアはロングシートとセミクロスシートの2種類を標準設定した。
ロゴマークも新調した。GとDを組み合わせ、新緑をイメージしたグリーンと清らかな水の流れをイメージしたブルーで囲むことで、循環型社会や持続可能性に対応した車両であることを表現したという。
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■ 嵐電「KYOTRAM」は「日常と観光をつなぐ」ことがテーマ




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■ 嵐電「KYOTRAM」は「日常と観光をつなぐ」ことがテーマ
三番手を務めたのは、今年のブルーリボン賞獲得車両、嵐電「KYOTRAM」をデザインしたGKデザイン総研広島プロダクトデザイン部シニアディレクターの鈴木スバル氏で、「地域ブランドと車両デザイン」をテーマとした。
鈴木氏はこの二つの関係を考えるうえで、車両を地域のシンボルにすること、日常利用と観光利用を両立させること、車両を作る段階からアウトカムの設計をすることの三点を大切にしているという。
「地域のシンボルを創出する」で紹介されたのは、叡山電鉄の「ひえい」だ。叡山電鉄は、比叡山や鞍馬へ向かう観光路線である一方、沿線に大学や住宅もある生活路線であり、両方を意識した車両作りが求められた。
「自然の高揚感、回遊の楽しさなどいくつかの案のなかから、比叡山に向かう神聖な体験を提供する車両ということで、神秘性をテーマにした案が選ばれました。ちょっと奇抜ですが、路線の特徴を一番明快に伝えているというのが選択の理由でした」
車体各所に取り入れた楕円形は、比叡山と鞍馬山という二つの聖地を持っていることを表現。また、天台宗の僧侶が身につける黄色の輪袈裟からも着想を得ている。車内はひとつの座席につき一枚の楕円形の側窓を、座席の間に並べるようにした。座席の背もたれを高く取れるという効果もある。
二番目は「日常と観光をつなぐ」というテーマで、ブルーリボン賞を受賞した嵐電KYOTRAMを取り上げた。こちらも観光輸送と日常輸送の両立が重要だと考え、沿線の「らしさ」の調査から始めた。そこでわかったのは、電車と人や家との距離がかなり近いことだった。
よって観光客向けとして目を引くような姿ではなく、原点回帰をコンセプトとして、かつて嵐電を走っていた車両や昔のヨーロッパの車両に見られる、先頭部がラウンドした形状を取り入れ、側面は街並みに合うよう水平垂直基調で構成した。先頭部は人と近い距離にいることから、やわらかく愛嬌のある表情を目指したという。
「内装も日常と観光の両立を図るために、通勤電車に多い白にはこだわらず、落ちついたグレーと木目を基調に、嵐電のシンボルカラーである京紫色をアクセントで使って、華やかさを出しています」
最後に掲げたのは「これからのアウトカム思考」で、アウトプットが「作ったもの」「実施したこと」を指すのに対し、アウトカムはその結果として起きた変化を意味すると説明。
車両を作る側はアウトプットに集中しがちだが、アウトカムの視点では、移動価値の向上や、地域活性化などが目指すべき成果となる。利用者や従業員の気持ちを変えていくような仕掛けを、作る段階で仕込んでおき、収益やファン形成に結びつけていきたいとした。
例として出したのは京阪電鉄のプレミアムカーで、今まで特別料金を取らなかった京阪電鉄が、400〜500円で座席指定できる上質なシートを用意したところ好評で、連結する列車の種類を増やすなどしているとのことだった。専用グッズの展開なども通じて、運賃以外の収益化やファン創造というアウトカムにつながっているという。
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■ 伊予鉄道7000系は大手私鉄の最新車両に匹敵する装備




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■ 伊予鉄道7000系は大手私鉄の最新車両に匹敵する装備
最後はローレル賞を受賞した伊予鉄道7000系を、近畿車輌デザイン室室長の杉本信広氏が、「SmartSigma(スマート・シグマ)のデザイン戦略」というタイトルで紹介した。ちなみに今年のローレル賞は東武鉄道80000系も受賞しているが、こちらも近畿車輌が手掛けたものだ。
杉本氏は2つの受賞車の写真を並べ、同じ鉄道車両なのに似ていないことを指摘。事業者のニーズは多種多様で、それに合わせてほぼフルオーダーで作り上げているからで、そのなかでユニークなデザインを心掛けていると語った。
とはいえ、その裏では、同じ規格の車両でも治具を組み換える必要があり、かなりの時間と労力を要するそうで、特に製造数が少ないコンパクトなオーダーは、コストが高くなるなど厳しさが増すという。
「他の路線で走行していた車両を購入する方法もありますが、近年はその調達も難しくなっています。我々はお客様のご要望があれば、何とかして作りたい。そこでコンパクトな案件にできる限り対応し、多様な要望を実現できる車両を考えました」
これがSmartSigmaだ。要望の多い全長18mの車両で、名前はギリシア文字で18番目のΣ(シグマ) と、近畿車輌のものづくりを象徴するスマートを組み合わせた。Σは数学では総和を意味する記号でもあり、最適解を提供するという意志も込めた。
具体的には設計費を、基本的に変更しない「ベース」、企画段階で選択できる仕様の「オプション」、事業者によって個別対応が必要な仕様の「カスタム」に分類した。ベース部分の設計費が共通なので、コストを削減できる。
ベース部分にはステンレス車体、内装材の構成、基本的な機器の構成や配置が含まれる。オプションは乗降扉の数やワンマン対応、カスタムは先頭形状の要望のほか保安設備や列車無線などとなっている。
「共通化のメリットは生産合理化だけでなく、数多く作ることで品質が向上するという点もあります。地方鉄道にとって重要な補助金制度の活用にも対応しており、申請要求を満たす車両仕様を策定しています」
このSmartSigmaを採用した最初の車両が伊予鉄道7000系だ。伊予鉄道にとって実に67年ぶりの新車で、人に優しいバリアフリー設計、脱炭素化に向けた省エネ性能、乗ってみたくなる未来的な流線型フォルムが特徴で、オレンジ色のカラーリングで愛媛らしさを表現している。
使用電力は従来型に比べて約50%も削減。車内はすべての扉の上に行先案内とデジタルサイネージを設け、英語表記と英語アナウンスも取り入れ、車いすスペースを設けている。大手私鉄の最新車両に匹敵する装備だ。
最後に杉本氏は、人口減少で鉄道の利用者は減ると言われているが、環境に優しく大量輸送ができるという強みもあるので、地域のブランディングに寄与しつつ、リーズナブルな価格で長く使える車両を形にしていきたいと抱負を述べた。
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【第2部】
■ 登壇者によるパネルディスカッション


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【第2部】
第2部は登壇者が列席してのパネルディスカッション、モデレーターはRDE実行委員で近代建築・デザイン史家の橋本優子氏が務めた。まず橋本氏は、「地方の(local)」と「地域の(vernacular)」という2つの言葉が、鉄道デザインではどのように捉え、位置づけているかを訊ねた。
■ 登壇者によるパネルディスカッション
森口氏はジャーナリストの立場で「地方と中央、地域と中央はともに対抗概念だが、領域的な意味の地方に対して、地域は人々が主体的に集まり牽引することで拓かれる」と答え、GKデザイン総研広島の鈴木氏は「地域は産業・文化などの分野に資する創造的な活動が行われる場だが、地方にはこのような考え方が希薄に感じられる」と述べた。
続いての質問は地方鉄道が抱える課題について、車両メーカーはデザインの視点で、いかなる解決を導くことができるかというものだった。
アルナ車両の田島氏は「路面電車は多種多様なので個別化・共通化の両立を求めず、それぞれのニーズと嗜好性に眼を向けている」と答え、川崎車両の青木氏は「社会インフラとしての鉄道を持続させるには人口減少問題に向き合わねばならない」として、GreenDECを課題解決のための車両に位置づけた。近畿車輌の杉本氏は「今日の鉄道デザインは効率やコストパフォーマンスが注目されるべきで、SmartSigmaでは合理的な解決を考慮した」と説明した。
地方鉄道は直接的なエンドユーザーが限られているからこそ、彼らの意向を汲みつつ、それをより広汎な間接的エンドユーザーに訴求していくことも大事になる。
ここでデザインに携わる人々に求められることについて問われた青木氏は、「いかにして鉄道を維持していくか、本気で取り組む姿勢が求められる」と答え、杉本氏は「それぞれの地域に対する理解を深めることが必要で、知る機会をもっと設けるべき」と語った。鈴木氏は「市民一人ひとりが地域のデザインを自分事として受け止められるよう、参加意識を高める」ことが重要とした。
近い将来、鉄道事業は都市部であってもビジネスとして成立させることが厳しくなっていくと予想される。そうしたなか、すでに種々の困難に直面している地方鉄道について、デザインに携わる人々がすべきことも問われた。
森口氏は「地域のリサーチ、地域のデザインの掘り起こし、地域の人々とのコラボレーションを提案すること」、田島氏は「地域が抱える課題の早期発見と確実な対処、特に高齢化や人口減少への対処が鍵」とした。 鉄道の魅力を保つことが使命であるとした杉本氏は、「内装やディテールのリニューアルに関わる新しい手法を考える」ことを提案した。
最後に地方や地域のデザイン全体に関する意見や提案を求められた田島氏は、「一元化の傾向が顕著な鉄道のデザインを、いかにして乗り越えられるか」を目指したいと語った。「進取と保全の視点を肝に銘じて、車両メーカーとして何ができるかを深化させていきたい」と述べたのは青木氏。鈴木氏は「常に地域の特性・魅力を熟知したうえで、それを視覚化する」ことが努めだとした。
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■ 地方は人間にとっての心の故郷


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■ 地方は人間にとっての心の故郷
ディスカッション後、RDE実行委員で月影デザインコンサルティング代表の山田晃三が総括をした。登壇者の話を聞いて、地方は空気がきれいで気分がほっとして、なぜか行きたくなったとのこと。その理由として、人間にとっての心の故郷ではないかという指摘をした。
「人類の歴史のなかでは、街ができたのは最近のことで、みなが実は田舎出身なのです。森のなか、具体的にはアフリカから、僕たちの祖先は出てきています。その記憶が体の中に染みついているので、地方に行くとほっとするのではないでしょうか。地方を大事にしなかったら、人生の厚みがなくなってしまうという感じがします」
さらに山田氏はこのRDEが、鉄道技術展という場で10年以上続いてきたことに触れ、デザインは技術と文化の架け橋になるべきと主張。スタイリングだけでなく、設計のプロセスや、他者とのコミュニケーションもデザインであり、技術と文化を掛け合わせたものがデザインだと思っていただきたいとメッセージを送った。
終了後は恒例の情報交流会へと移行した。講演やディスカッションの場ではわからなかったが、やはり大阪開催のため関西からの参加者が多く、幕張メッセとはひと味違う活気が伝わり、あちこちで新しいつながりが持たれたようだった。
鉄道技術展・大阪の展示会場を含めて感じたのは、関西には多くの鉄道関連事業者が本拠を構え、独自の発展を遂げていることだった。それは地方というより副首都と呼べるレベルであり、鉄道を語るうえでこの地を外すことはできないことを教えられた。
記録:森口将之/モビリシティ
写真:川口良介/産経新聞社
